日本機動部隊(以下、日機)のミッドウエィシナリオは、35年前の仲間内では、仮装戦の決戦シナリオと同程度の不人気さでした。
たぶん、最初に必ずミッドウエイ基地を空爆することという陰謀ルールと、米軍の夜間索敵ルールが原因だったと思います。
「こんなのずるいじゃん! 運命の5分間がなければ、日本が勝ってたのに!!」っていう血気盛んな少年達ばかりでしたから。
思えば「陰謀ルール」という言葉自体、この日機のミッドウエイシナリオの特別ルールを表すために、最初に使われたのではなかったか?
でも、今にしてみればこれらのルールは、あのスケールでミッドウェイらしさを演出する必要不可欠な装置だったと思うのです。
「親の心子知らず」というか、「この歳になってから判る親心」というか。
コンビニ戦史本なんかでは、未だに日本軍の敗因は、運が悪かったからなんていうリード文が表紙を飾っていることがあって寒気を覚えるのですが、私からすればミッドウエイ海戦は日本軍が負けるべくして負けたのです。
なんせミッドウエイ作戦での日本軍の幹部は、勝利条件を共有していなかったのですから。
米空母戦力の殲滅をもくろんでいた人もいれば、ハワイにプレッシャーを与えるためにミッドウエイを占拠したかった人もいた。
これでは日本軍の気勢を削ぐことただ一点に集中した米軍に勝てるわけはないのです。
そして、米軍は自分たちの望むタイミングでやってきてくれるのだと信じていた。
もう暗号解読云々以前の問題かと。
ただ、じゃあそれゲームにするにはどうすればいいのでしょうか。
日本機動部隊の切り取り方は非常に巧妙です。
登場するのは南雲の機動部隊と上陸支援隊のみ。
上陸支援隊は、南雲機動部隊として誤認されるために登場しているようなものです。
ミッドウエイ海戦の意義とやらはもうどこかに置いといて、純粋に空母決戦としてとらえた場合に、日本軍が課せられた足枷を明瞭にする。
そうすることで、少なくとも日本軍プレイヤーは南雲の視点でゲームを進められるわけです。
もし、本気でミッドウエイ海戦の全体像を描くなら、私はマップにアリューシャンやサモアも含め、日本軍の作戦目標を決定する段階、つまり軍令部と連合艦隊司令部の対立と、米軍としてはロシュフォートの情報収集暗号解読戦あたりから組み込まねば無理だと思っています。で、いざゲームが始まると、展開によってマップの約7割は使われない範囲になるという。
これをフラットトップや日機のタイムスケールでするのはやはり無理な話でしょう。
空母決戦に焦点をあてたければ、必然的に作戦の意義のような部分はオミットせざるを得ない。
なにがいいたいかと言うと、空母戦ゲームと一括りにしてしまいがちなジャンルですが、なにを再現しようとするかで、同じ戦いを再現するにもサイズが大きくも小さくもなるし、まったくテイストの異なるゲームになるってことです。
私は例えばツクダの航空母艦のサイズ感覚ははっきり言って嫌いなのですが、同じく空母戦ファンを自称する方で、あれこそ自分の望むサイズと仰る方もいる筈なわけです。
運命の5分間(それが本当にあったかなかったかはまた別の話です)を自然にシステムの流れで再現するには、確かにあれくらいの緻密さは必要かもしれません。
空母戦ゲームはそもそも相手を選ぶ上に、更にその中で再現されているべきことの好みが細分化されてしまうのだとすれば、プレイ相手を探すのに他のゲームより苦労するのはあたりまえなわけで。
その上、たいがいにおいて自分の手の内を秘匿するタイプのゲームにならざるを得ないわけですから、プレイ相手に巡り会えるなんていうのは、もう奇跡的な状況なのではと思うのでした。